「お気になさらず」とはどんな意味?
「お気になさらず」とは、どのような意味で捉えているでしょうか。
結論から先に言うと、状況や前後の言葉で意味が変化します。
元の語源は「気にする」という言葉になります。
そこから、敬語にするため「御」という接頭辞を付け、「する」を「なさる」に変化させた言葉です。
このことから、「気にしないでください」や「心配には及びません」などの意味を持ちます。
ただし、前後の言葉や口調次第では、「構わないで欲しい」という意味を含むことになり、相手に失礼な態度になる場合があります。
「お気になさらず」はどんな時に使う?
では、「お気になさらず」を正しく使うためには、どのような文章がいいのでしょうか。
ここでは、シーン別に例を紹介します。
- 謝罪に対する返事として
- 心配などへの感謝として
- 気遣いを断るとき
- 相手を慰めるとき
- 相手に構ってほしくないとき
ケース①:謝罪に対する返事として
1つ目の使い方は、謝罪に対するお返事の場合です。
これはビジネスシーンでも多く、使いそうな例題ですね。
例えば、上司や仕事の取引先などとの会話で、相手方が謝罪をしてきた場合を想像してみてください。
可能な限り相手がこれ以上、気を遣わずにすむようにしたいですよね。
そのような場面で、さらっと「お気になさらないでください。」と言えるとスマートですね。
「大丈夫です」等という言葉より、優しい印象が伝わり、安心感を与えることが出来ますよ。
ケース②:心配などへの感謝として
2つ目の使い方は、心配してくれたことへの感謝の意味で使う場合です。
誰かに心配をしてもらった場合に、これ以上は触れないで欲しい、放っておいて欲しい場合がありませんか?
友達であれば、直接そのままの言葉で伝えることができても、仕事の場面では不適切ですよね。
特に上司の場合は、言葉を選びたいもの。
そんなときにも「お気になさらないでください」という言葉を使うことが出来ます。
ただし言い方や表情に注意しないと、突き放したようにも聞こえ、失礼に当たる場合があります。
状況次第では、「ご心配なさらないでください」などという言葉に置き換えてもいいですね。
ケース③:気遣いを断るとき
3つ目の使い方は、気遣いを断りたい場合です。
せっかくの気遣いですから、あまり角が立たないように、やんわりと断りたいですよね。
そんな場合は、「お気になさらず」の前後に言葉を足しましょう。
例えば、ビジネスシーンで相手方の会社に出向いた場面を想像してみてください。
長居せず用事だけ済ませたいけど、お茶を用意しているな、というときに「お気になさらず。すぐに出ますので。」とサラッと言ってみてください。
状況によっては、その言葉の後に「お気遣い、ありがとうございます。」と付け加えると、相手の顔を立てつつ、断ることが出来ますね。
ケース④:相手を慰めるとき
4つ目の使い方は、相手を慰めたい場合です。
これは1つ目の使い方とも、少し似ていますね。
相手方が失敗してしまい、気にしている様子の時に「お気になさらず。大丈夫ですよ。」と伝えることが出来るとスマートですね。
またその時は、理由も付け加えると更に、相手方が安心する材料になります。
例えば、書類を汚してしまった場合は、「すぐに印刷し直せますから。」などを加える、といったイメージですね。
ケース⑤:相手に構ってほしくないとき
5つ目の使い方は、相手に構って欲しくないときです。
これも2つ目の使い方と、少し似ていますね。
例えば、体調が悪いときなど、気にせず、大丈夫である旨を伝えたい場合を想像してみてください。
大丈夫、という言葉では、目上の方への言葉としては、あまり適切ではないですよね。
そんなときは、「ただの花粉症ですから、気になさらないでください。」などと使えると、スマートですね。
「お気になさらず」は上司など目上の人にも使える?
では、「お気になさらず」の言葉は、上司や取引先など立場が上の方へ使えるのでしょうか。
結論としては、「お気になさらず」は、相手へ丁寧に返す言葉として使うことが出来ます。
ただし、「お気になさらず」だけを返すよりも、前後に言葉を足すと印象が和らぎます。
その言葉を使う以上、相手方が謝罪をしている、配慮をしてもらおうとしている場面です。
相手方がこれ以上は大丈夫だな、と安心できるようにしたいですよね。
「お気になさらないでください。むしろご指導いただき、ありがとうございます。」などと伝えると、相手を立てつつ、意図する言葉を伝えられますよ。
「お気になさらず」を使うときの注意点
複数の意味を持ち、また目上の方にも使える言葉として「お気になさらず」は便利だな、と思った方。
既に少し触れていますが、この言葉を使うときに注意が必要な場合もあります。
「お気になさらず」は場面によっては、冷たく、突き放されているかのような印象を与えます。
特に気遣いを断りたいときやこれ以上、構って欲しくないときは、気持ちが態度に表れてしまいがちです。
そのような対応は、人間関係がこじれるきっかけになりかねません。
円滑に人間関係を築くためにも、「お気になさらないでください。」や前後に言葉を足して、感謝の意を述べるなど、少し工夫をしてくださいね。
手紙やメールで「お気になさらず」を使うときのポイント
ビジネスは対面や電話での応対だけ、とは限りませんよね。
どのような仕事でも、手紙やメールなど文章は必須です。
ではそんな文章で「お気になさらず」は使えるのでしょうか。
結論としては、「お気になさらず」を使うことは出来ますが、そのまま使うことはオススメしません。
表情や態度が見えない分、文章は相手に与える印象を第一に考え、丁寧に返すことが求められます。
「お気になさらず」を使うときは、「どうぞお気になされませぬよう、お願い申し上げます。」などより柔らかい印象を受ける言葉に変換してくださいね。
「お気になさらず」を使った例文
「お気になさらず」の言葉が持つ意味や使い方のポイントを紹介してきました。
ここでは、実際に使う際の例文をご紹介します。
- 「謝罪に対する返事として」の例文
- 「心配などへの感謝として」の例文
- 「気遣いを断るとき」の例文
- 「相手を慰めるとき」の例文
- 「相手に構ってほしくないとき」の例文
例文①:「謝罪に対する返事として」の例文
1つ目の例文は、相手方から謝罪をされたときの例文です。
これはビジネスにおいては、丁寧に対応したい場面ですよね。
例えば、相手方に「この度はお手数をお掛けいたしまして、申し訳ございません。」
と言われた場合を想定してください。
大丈夫である旨を伝えつつ、これからも円滑な関係を保ちたいですよね。
返事としては、「どうぞ、お気になされませぬようお願い申し上げます。」という言葉と共に、連絡をいただいた感謝の意を述べてみてはいかがでしょうか。
例文②:「心配などへの感謝として」の例文
2つ目の例文は、相手への気遣いに対して、感謝したい場合です。
これはビジネスだけではなく、日常でも使う機会がありますね。
何か相手に心配をさせてしまったときに、大丈夫だと伝えるためにも「お気になさらず」は使えますね。
ただ言い切りの言葉だと、突き放したようにも聞こえます。
「お気遣い、ありがとうございます。」という言葉を足しつつ、「お気になさらないでください」と使ってみてください。
感謝の意を伝えつつ、これ以上の気遣いは無用である旨が伝えられますね。
例文③:「気遣いを断るとき」の例文
3つ目の例文は、気遣いを断りたい場合です。
これはビジネスだけではなく、日常でも使う機会がありますね。
例えば、電車の中で席を譲って貰った、けれどもすぐに降りるから気遣いは不要だな、というときありますよね。
そんなときは「すぐに降りる駅ですので、お気になさらないでください。」と「お声掛けありがとうございます。」と返してみてはいかがでしょうか。
気遣いを断ってはいますが、相手方も嫌な気分にならずに済みますよね。
例文④:「相手を慰めるとき」の例文
4つ目の例文は、相手を慰める場合です。
これは1つ目の例文と組み合わせることも、想定されますね。
例えば、相手方へ出向いた際に、準備が整っていなかったため再度、日を改める場合を想像してみてください。
そんなときに、「また伺いますので」だけだと、印象は良くないですよね。
ぜひ「またお伺いをいたしますので、どうぞお気になさらないでください。」と伝えると、気にしていない旨も一緒に伝わるのではないでしょうか。
例文⑤:「相手に構ってほしくないとき」の例文
5つ目の例文は、相手にこれ以上構って欲しくないとき場合です。
特に気遣いや心配事を減らすときに、使いたいですね。
例えば、上司の突然の休暇により、代わりに会議に出席しなければならない場合を想像してみてください。
「大丈夫です。」だけよりも、「私のことはどうぞ、お気になさらずに、ゆっくりお休みください。」と伝えてはいかがでしょうか。
気遣いや心配を交わしつつ、これ以上は大丈夫である旨を伝えられますね。
「お気になさらず」への返事はどうする?
「お気になさらず」が色々な場面で使える、と紹介をいたしました。
では、「お気になさらず」と相手方に言われた場合の、お返事についてもご紹介します。
- 「ありがとうございます」
- 「お気遣いいただき、ほっといたしました」
- 返答・返信不要のケース
ケース①:「ありがとうございます」
1つ目のケースは、感謝をしたい場合です。
「どうぞ、お気になされませぬようお願い申し上げます。」と言われたら、どうお返事しますか?
感謝の意だけを述べるのも1つの手ですね。
「ありがとうございます。」だけでも、相手方へ気持ちを伝えることは出来ますね。
もし、より丁寧に返すのであれば、「お心遣いに感謝いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」と伝えてみてはいかがでしょうか。
ビジネスであれば、今後も関係が続くことが多いですよね。
今後の仕事へスムーズに繋がるように、感謝の意を述べるとより良い関係を築けますよ。
ケース②:「お気遣いいただき、ほっといたしました」
2つ目のケースは、何か心配していただいた場合ですね。
気遣っていただいたとき、1つ目のケースのように感謝を伝えることも1つです。
またホテルなどスタッフの方に、気遣っていただいたときに感謝を伝えるだけ、安心した気持ちを伝えたいですよね。
「お気遣いいただき、ほっといたしました」と伝えれば、こちらの心情も一緒に伝えられますね。
その時の状況によっては、事柄の経過を伝えて気遣いの感謝を伝えると、より相手も安心しますね。
ケース③:返答・返信不要のケース
3つ目のケースは、返信がいらない場合です。
メールなどは特に、終わりの目処がどこなのか、難しいですよね。
「お気になさらず。」と、相手方に言われた場合、どのように受け取るでしょうか。
この言葉は多くの意味を含むため、判断が難しいところですね。
相手方から送られてきた文章だけでなく、相手方の性格に寄るところも大きいのが事実です。
もし返信がこれ以上不要であれば、無理に返してしまうと返って余計な軋轢を生みますよね。
前後の文章をよく鑑みて、これ以上は大丈夫だ、という意味で「お気になさらず」を使っているか判断してください。
「お気になさらず」は英語でどう言う?
「お気になさらず」という言葉は、何も日本語特有の言い回しではありません。
ビジネスで英語を使うという方でも、相手方に同様の意味を伝えることが出来ますよ。
「お気になさらず」は心配しないで、という意味でもありますので「don't worry」と伝えればいいでしょう。
または「no worries」でも代用できますね。
例えば、これ以上は気にしないで大丈夫、問題ないと伝える場合は、「Don’t worry about it. It’s not a problem.」となりますね。
この言葉は覚えておくと、ビジネスシーンだけでなく、日常会話でも使えますよ。
「お気になさらず」に使い方の似た表現
「お気になさらず」を使う場面を紹介してきましたが、その言葉ばかり繰り返す訳にもいきませんよね。
さらに丁寧にしたい場合など、違う言葉で伝える方法を紹介します。
- どうぞお構いなく
- お気遣いなく
- お気に留められませんよう
- お気持ちだけ頂戴いたします
- 遠慮させていただきます
- 滅相もございません
- ご放念いただけますでしょうか
表現①:どうぞお構いなく
1つ目の表現は、「どうぞお構いなく」です。
この言葉には、これ以上は放っておいて、気にしないで欲しいという意味がありますね。
「お気になさらず」よりは、こちらの意図をより強く伝えることが出来る言葉でもありますね。
しかしこの言葉は、ビジネスや日常的に合うような相手に使うことはオススメしません。
「どうぞお構いなく」は、相手方に冷たい印象を与えます。
特にメールなど相手の表情が見えないような場合は、怒っている印象を与える場合もあります。
使うのであれば、せめて口頭のみに止めておくことがベターです。
表現②:お気遣いなく
2つ目の表現は、「お気遣いなく」という言葉です。
この言葉は「お気になさらず」と同様に、複数の意味を持つ言葉とも言えますね。
ただしこの言葉も、1つ目と同様に少し冷たい印象を与えてしまいます。
使うのであれば、「どうぞ、お気遣いなさいませんようお願いいたします。」と丁寧な言葉にしてください。
この言葉なら、メールなどの文章で使っても相手方に意図を伝えつつ、柔らかい印象を持っていただけるのではないでしょうか。
表現③:お気に留められませんよう
3つ目の表現は、「お気に留められませんよう」という言葉です。
この言葉は特に、メールなど文章で使うのがオススメの言葉ですね。
2つ目と同じく、丁寧な言い回しですので、ビジネスシーンでも目上の方に対して使うことも出来る言葉でもあります。
ただ「お気に留められませんよう」だけでは、文章としては完成していませんね。
例としては、「お気遣い痛み入ります。どうぞ、これ以上はお気に留められませんよう、お願い申し上げます。」と使用してみてはいかがでしょうか。
表現④:お気持ちだけ頂戴いたします
4つ目の表現は、「お気持ちだけ頂戴いたします」という言葉です。
気遣いをいただいたとき、断りたい場合もありますよね。
せっかくのご厚意を断るのですから、できるだけ丁寧に、かつ感謝の意も伝わるような言葉がいいですね。
そんなときに「お気持ちだけ頂戴いたします」と使ってください。
また更に言葉を足して、「お気持ちだけ有り難く、頂戴いたします。」と伝えるとより丁寧な言葉になりますね。
目上の方や文章では、こちらの言葉をオススメしますよ。
表現⑤:遠慮させていただきます
5つ目の表現は、「遠慮させていただきます」という言葉です。
この表現からわかる通り、3つ目と同様に相手にNOを突きつける言葉ですね。
相手からの気遣いや誘いを断るときに使う言葉になりますが、この言葉だけを使うことはオススメしません。
「遠慮させていただきます」だけでは、冷たく、失礼な印象を与えてしまいます。
この言葉を使う場合は、「せっかくのご厚意ですが」や「申し訳ありませんが」を一緒に使ってください。
また状況次第で、感謝の意を述べてもいいですね。
表現⑥:滅相もございません
6つ目の表現は、「滅相もございません」という言葉です。
何か感謝をされたとき、気遣いを受けたときに使う言葉ですね。
ただし、「滅相もございません」は正しい日本語ではありません。
正しくは、対等の立場では「滅相もない」を、目上の人には「滅相もないことでございます」になりますよ。
この言葉は、「お気になさらず」よりもより丁寧な言葉になるため、目上の方やお客さま相手に使う言葉とも言えますね。
また謙遜する意味を伝えることも出来ますので、感謝をいただいて嬉しい、という気持ちも合わせて伝えることが出来ますね。
ただへりくだった言い方でもありますので、あまり多用することは良いことではありません。
特に目上の方の場合は、自分の仕事に対してプライドがないと、捉えられる場合もありますので注意してくださいね。
表現⑦:ご放念いただけますでしょうか
7つ目の表現は、「ご放念いただけますでしょうか」という言葉です。
この言葉は、初めて聞いた、という方も多いかもしれませんね。
この言葉は、「お気になさらないでください」をより丁寧に、かしこまって言う言葉になります。
「放念」は、「気にしない」という意味合いをもつため、使い方としては「気にしないでください」と同じになりますね。
ただし、この言葉は使う際には他の言葉以上に注意が必要です。
当然ですが、言葉は相手に伝わってこそ、意味をなすものですよね。
初めて聞いた、という方がいるように、意味が伝わらなければ、この言葉を選んだこと事態に悪い印象を与えかねません。
ビジネスでは特に、相手に伝わる言葉を選ぶことも、仕事が上手くいくコツとも言えます。
相手に伝わることを前提で、使ってくださいね。
おすすめの敬語や話し方の本
「お気になさらず」は複数の意味をもっていること、言い方次第では相手に与える印象が大きく変わることをご紹介してきました。
日本語の難しさを実感しますよね。
ビジネスにおいては、その一言で大きく物事が変わる、上手くいくことがあります。
些細なことですが、言葉を味方に付けて印象を良くしてみませんか。
この本では、すぐにでも使えるキーフレーズが多く掲載されています。
いきなり全て、ではなく少しずつ取り入れて、仕事やプライベートに生かしてみてはいかがでしょうか。
「お気になさらず」を使って、円滑な関係を
言葉は、微妙なニュアンスの使い分け次第で、良くも悪くも相手の印象を大きく左右するものですね。
特にビジネスにおいては、言葉選び1つで円滑な関係を築くことが出来るか、決まると言っても過言ではありません。
またメールが多用される仕事においては、言葉を大切に使っていきたいですね。
表情や態度で伝えることが出来ない以上、文章が持つ力は絶大とも言えます。
ぜひ「お気になさらず」という言葉を上手に使って、コミュニケーションを図ってくださいね。