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2019/08/04

陣痛促進剤はどんなときに使う?陣痛促進剤の作用・陣痛誘発ジンクスまで紹介

お産の現場で必要不可欠な陣痛促進剤。
陣痛促進剤は、子宮の収縮を促し、分娩を助けるために使われます。

安全に使えば有用である一方で、状況によっては、お母さんや赤ちゃんにリスクを背負わせます。
陣痛促進剤が必要な場合と、そうでない場合とでは、どのように違うのでしょうか。

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陣痛促進剤とは?

陣痛が迫る人

陣痛促進剤とは、どのような作用をもった薬なのでしょうか。
陣痛促進剤は、子宮収縮薬とも呼ばれ、子宮を縮ませる作用をもたらします

分娩時、胎児がお母さんの体の外へ出るためには、お母さんの子宮が自発的に縮む力が必要です。
この子宮の収縮のことを、(痛みを伴うため)陣痛と呼びます。

また、出産直後、お母さんの子宮が急速に縮み、子宮からの出血を抑止する生理作用が生じます。
このときにも陣痛が現れます。

陣痛が弱く、胎児がお母さんの体外にうまく出てこられないときや、お母さんの出産後の出血が十分に抑えられないとき、医師の判断によって陣痛促進剤が使用されることがあります。

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陣痛促進剤が必要なケース

陣痛促進剤

それでは、どのようなときに陣痛促進剤が必要となるのでしょうか。

  1. 前期破水した
  2. 墜落分娩の危険がある
  3. 過期妊娠である
  4. 胎盤の機能が低下している
  5. 陣痛が弱い

一つずつ見ていきましょう。

陣痛促進剤が必要なケース①: 前期破水した

まず最初に、前期破水が起きたとき、陣痛促進剤が必要になることがあります
前期破水とは、まだ分娩が始まっていないうちに胎児を包んでいる膜が破れ、羊水が子宮から出ていってしまうことを指します。

前期破水すると、破れた場所から細菌が侵入し、お母さんや胎児に感染が起きる恐れがあります。
この時点で、胎児が子宮の外に出ても生きていけるくらいに発達していれば、陣痛促進剤で分娩を促すことがあります。

陣痛促進剤が必要なケース②: 墜落分娩の危険がある

次に、墜落分娩の危険があるときにも、必要になることがあります
例えば子宮頚管の抵抗力が弱いお母さんは、立った状態のときや、お手洗いで力んだときに、急に赤ちゃんを分娩してしまう(墜落分娩に至る)恐れがあります。

このようなリスクを持ったお母さんには、入院して、きちんと医療的管理がなされる環境下で陣痛促進剤を使用したほうが、安全に分娩できると判断されることもあります。

陣痛促進剤が必要なケース③: 過期妊娠である

また、分娩予定週数を過ぎた過期妊娠にもかかわらず陣痛がこないとき、陣痛促進剤を使用することがあります
過期妊娠の問題は、羊水の環境が悪化し、胎児の健康が有害になる恐れがあることです。

このように、赤ちゃんの健康上の配慮から、陣痛促進剤が必要になることもあります。

陣痛促進剤が必要なケース④: 胎盤の機能が低下している

その他、胎盤機能が低下しているときも、赤ちゃんの健康上の配慮から、陣痛促進剤が必要になることがあります
胎盤は胎児とお母さんとが酸素や栄養素を交換する場ですので、胎盤がうまく働いていないまま妊娠を継続すると、胎児の発育に影響が生じてしまうかもしれません。

予定よりも早く分娩を行い、お母さんの体の外で保育しながら発育を見守るほうが、赤ちゃんの健康を守れると判断された場合には、陣痛促進剤が使用されることとなります。

陣痛促進剤が必要なケース⑤: 陣痛が弱い

陣痛が微弱で分娩が困難なときも、陣痛促進剤を使用したほうが良いと判断されることがあります
多胎妊娠(双子のように複数の胎児を妊娠していること)や、子宮筋腫をもつお母さんは、微弱陣痛になりやすいことが知られています。

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陣痛促進剤が使えないケース

陣痛促進剤が使えない

逆に、陣痛促進剤を使えないのはどのようなときでしょうか。

  1. 過強陣痛のとき
  2. 前置胎盤のとき
  3. 骨盤の形に明らかな異常があるとき

一つずつ見ていきましょう。

陣痛促進剤が使えないケース①: 過強陣痛のとき

何らかの原因で産道の抵抗が高くなった結果、陣痛が異常に強い状態を、過強陣痛といいます
子宮が強く収縮すると、胎児を締め付けることにもなるので、それ以上陣痛促進を行うことは適切ではありません。

過強陣痛が現れるまで陣痛促進剤を使用していた場合は、すぐに投与が中止されます。

陣痛促進剤が使えないケース②: 前置胎盤のとき

前置胎盤が見つかったときも、陣痛促進剤を使用できないことがあります
前置胎盤とは、胎盤が子宮口の位置に定着してしまっている状態を指します。

前置胎盤のお母さんは出血をきたしやすく、帝王切開のほうが生命を危険に晒すおそれが少ないと判断されることがあるため、このような場合は、陣痛促進剤を使った分娩は行いません。

陣痛促進剤が使えないケース③: 骨盤の形に明らかな異常があるとき

お母さんの骨盤の形に明らかな異常があるときも、促進剤を使用できないことがあります
骨盤は穴の空いたバケツのような形をしています。

胎児がバケツの口に頭から入り込み、バケツの底から出ていくイメージが、普通分娩です。バケツの口に相当する範囲が異常に狭いと、産道を出ようとする胎児の頭が詰まってしまい、普通分娩が困難となります。

このような状態で無理な分娩を行うと、赤ちゃんに障害を起こすおそれがあります。
よって、お母さんの骨盤の形に異常がある場合、帝王切開の適応となり、陣痛促進剤を使えないことがあります。

また、お母さんの骨盤の形が正常でも、胎児の体が大きすぎて産道を通過できないときは、同様の理由で帝王切開となり、陣痛促進剤を使えないことがあります。

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陣痛促進剤の種類

陣痛促進剤の種類

陣痛促進剤には、いくつかの種類があります。

  1. プロスタグランジン
  2. オキシトシン

順番に見ていきましょう。

①: プロスタグランジン

プロスタグランジン製剤にはPGE2とPGF2αの二種類あります
分娩の過程には第1期、第2期、第3期があり、PGE2は第1期に、PGF2αはそれ以降に使用されます。

第1期とは、分娩が始まってから子宮口が全開大するまでをいいます。
この時期に使われるPGE2は、陣痛促進剤というより、陣痛誘発剤とよばれます。

PGE2は経口薬ですが、PGF2αは注射により投与します。

②: オキシトシン

オキシトシンも、PGF2α同様、分娩第1期以降に使用される陣痛促進剤です。
注射により投与されます。

ちなみに、オキシトシンは授乳中のお母さんの体内でも生合成されるホルモンです。
つまり、授乳行為それ自体が、分娩後の子宮を元の大きさに収縮させる作用をもたらします。

お母さんたちの中に、授乳中に陣痛のような腹痛を訴えることがあるのは、このためです。

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陣痛促進剤の効果

陣痛促進剤の効果

先に記したとおり、陣痛促進剤は子宮を収縮させる作用をもたらします
子宮を収縮させることで、胎児が産道を通ってお母さんの体の外に出ていくのを助けます。

また、分娩時には子宮から出血が起きますが、子宮が自発的に収縮していくことで、この出血が抑えられます。
分娩後の子宮収縮を助け、お母さんの体を大量出血から守る目的でも、陣痛促進剤が使用されることがあります。

子宮を収縮させる薬には、陣痛誘発剤と陣痛促進剤があり、陣痛の時期によって使い分けます。
分娩後には、お母さんの体の中でも陣痛促進剤と同じ成分であるオキシトシンが自然に合成されており、子宮の復古を助けます。

また、オキシトシンは俗に愛情ホルモンとも呼ばれ、母子関係の愛着形成を助けることで知られています。

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陣痛促進剤のリスク

陣痛促進剤の副作用

陣痛促進剤を使う危険性はないのでしょうか。

  1. 過強陣痛
  2. 子宮破裂
  3. 頚管裂傷

順番に見ていきましょう。

リスク①: 過強陣痛

陣痛促進剤の作用が強すぎると、陣痛の間隔が短く、1回あたりの陣痛が強く、長く続きます
これを過強陣痛とよびます。
過強陣痛のとき、子宮内にいる胎児を締め付け、胎児の生命に危険が生じるため、すぐに陣痛促進剤の投与が中止されます。

また、過剰な負荷がかかった結果、子宮筋が疲労し、微弱陣痛となり分娩が困難になることもあります。
状態によっては、帝王切開が必要と判断されることもあります。

リスク②: 子宮破裂

陣痛促進剤の作用が強すぎると、子宮の筋肉が耐えられずに破裂してしまうことがあります
子宮に無理な負荷がかかるためです。

当然、分娩はここで停止してしまいます。
子宮が破裂すると、お母さんは大量の出血をきたし、ショックを起こすおそれがあります。

また、胎児は子宮の破裂孔からお母さんの腹腔内に出てしまい、機能不全に至る恐れがあります。
このようなとき、赤ちゃんを帝王切開で娩出することが必要となります。

同時に、子宮破裂を起こしたお母さんの命を守るため、緊急手術により子宮をすべて摘出しなければならない場合があります。

リスク③: 頚管裂傷

過剰な子宮収縮作用によって、子宮頚管に無理な圧力が加わり、裂傷をおこすことがあります
頚管裂傷に伴い、頚管表面に張り巡らされた動脈も損傷することで、出血が見られることがあります。

出血があまりに多い場合は輸液や輸血によって全身管理を行う必要があります。
また、子宮頚管の裂けた部位を縫合する必要があります。

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陣痛促進剤の適切な使用はメリットも大きい

陣痛促進剤のメリット

このように、陣痛促進剤は適切に使用されれば、円滑な分娩を助けるために大変有用です。
実際、お産の現場では陣痛促進剤は必要不可欠な手段です。

陣痛促進剤を使用しないで困難な分娩を行った結果、赤ちゃんに障害が残したり、お母さんの生命に関わる事態を引き起こすことがあります。
陣痛促進剤は、このような状態を防ぐために、条件さえ満たせば、積極的に使用されます。

職場復帰などの社会的理由から、お母さん自身が陣痛促進剤の利用を希望する場合もあります。
お母さんの体と胎児の健康状態の条件を満たせば、対応してもらえる場合もあります。

やみくもな陣痛促進剤の使用は危険を伴いますが、やみくもな陣痛促進剤の忌避もまた、リスクを伴うことといえます。
どちらが適切であるかは状況依存的であるため、医師や看護師とよく相談しておくことが大切です。

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促進剤を使わずに陣痛を促進させる方法4選

陣痛促進剤を使わない方法

最後に、陣痛促進剤を使わずに陣痛を促進させるジンクスをご紹介します(あくまでもジンクスです)。

  1. 焼き肉を食べる
  2. 炭酸飲料を飲む
  3. 運動をする
  4. 掃除をする

陣痛を促進させる方法①: 焼き肉を食べる

食べ物にまつわるジンクスは巷にあふれていますが、陣痛促進にも、そんなジンクスを持った食べ物があります。
SNSやブログでしばしば取り上げられるのが、焼き肉を食べるという方法

陣痛は初産婦では15時間程度かかります。
個人差がありますが、中には24時間以上陣痛の痛みに耐える方もいらっしゃいます。

この間、痛みで食事を摂ることが困難であれば、食べられるうちに食べたいものを摂っておくことは、体力を維持する上でも、大切なことといえます。

陣痛を促進させる方法②: 炭酸飲料を飲む

続いて、炭酸飲料を飲むという方法。オロナミンCを選ぶお母さんが多いようです。

これもまた、長い陣痛を耐えるために、精をつける目的にはよいかもしれません。
真偽のほどは定かではありませんが、炭酸飲料は消化管内で膨らみ腹圧を上げるので、産道抵抗に打ち勝つ効果をもたらすのでしょうか。

食べ物が喉を通らなくても、飲みたいうちに、飲みたいものを、というのは、大切なことといえます。
もちろん、炭酸飲料といって、ビールを選ぶ妊婦さんはいらっしゃらないでしょうけれど。

陣痛を促進させる方法③: 運動をする

体を動かすことで、陣痛を誘発したというお母さんもいらっしゃいます。
確かに、体幹を動かせば、子宮に刺激を与えるため、子宮の収縮運動に影響を与えないわけではありません。

ただし、産道抵抗が弱いお母さんが無理な運動を行い、過剰に腹圧がかかると、墜落分娩の恐れもあります。
どれくらいまでなら体の負荷をかけてよいのかは、かかりつけの医師とよく相談し、無理のない範囲にとどめておきましょう。

陣痛促進剤を使わない方法は、あくまでもジンクスであり、根拠は不明確なものです。

陣痛を促進させる方法④: 掃除をする

最後に、掃除をして陣痛促進するというジンクスです
掃除は全身運動ですので、先の「運動による陣痛誘発ジンクス」のような効果に似ているのでしょうか。

ことに、拭き掃除のように四つん這いになる動きは分娩時の体位でもありますので、何やら効果がありそうな気がします。
ただ、掃除に使用する薬剤には有毒な成分が含まれていることもありますので、自分はどの洗剤なら安全と考えるのか、よく見極めて選ぶことが必要です。

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陣痛促進剤について書いているおすすめの出産関連本

出産関連本

この1冊であんしん はじめての妊娠・出産事典
1404円

数々のお産に立ち会ったドクターの記した本です。
これ以外にも出産関連本を著し、個人ブログも立ち上げる発信力の高さから、著者のお名前を知っているお母さんは数多いのではないでしょうか。

妊娠から産褥期までの妊婦さんの体は、全身状態がダイナミックに変化します。
妊娠の各過程から出産後にかけて、体にまつわる不安やお金についての疑問を、わかりやすく説明しています。

初めての出産を控えた不安を解消するには、一見の価値ありです。

<下に続く>

陣痛促進剤についてのまとめ

赤ちゃん

以上のように、陣痛促進剤を使用したほうがいい場合と、そうでない場合には、それぞれ様々な条件の検討が必要です。
この見極めには、専門家の判断が必要であり、一概に「促進剤は危険」「促進剤は安全」といえるものではありません

日本の産科の技術レベルは国際的にも高い水準を維持しています。
出産にまつわる不安は、信頼できる医師や看護師と相談してみましょう。

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