洞察力の意味
洞察力(どうさつりょく)とは何でしょう。
字面から推測してみましょう。
洞穴のように深く、物事を見る力?
表面には見えない他人の感情・事情や、現在だけでなく少し先の未来も推察できる力?
はい、これらを兼ね備えた力が、ひとまず洞察力と言えそうです。
何だか、透視や予知と似ているように感じますね。
どんな職業の方に多い力なのでしょうか?
占い師、カウンセラー、宗教家のように、特殊なお仕事でしか、活かせないような気がしますか?
いいえ、どの職業の人も活かしているし、子どもからお年寄りまで、幅広い方が持っていたり、使っている力なのです。
大人が食器棚から容器を取り出すだけで、幼児がピンときて、
「ヨーグルトたべるんか?」と聞いています。
似た経験がある方、多いのではないでしょうか。
そう、これも立派な「洞察力」です。
生まれてわずか数年分の経験しかなくても、大人をしっかりと「観察」しているので、ピンポイントで、自分にとって重要なことは見抜けてしまいます。
大人にとっては、頼もしくも、ちょっとおそろしい、子育てあるあるです。
次の章では、今の例で登場した「観察力」と、「洞察力」の違いを比べてみます。
洞察力と観察力の違い
以下に紹介するのは、日常を、少し不思議にアレンジすることに長けた画家、マルグリットの「クレアボヤンス」です。
透視、という意味のタイトルなので、洞察とイコールとは言えないのですが、卵を見て、鳥を描いていますね。
ちょっと先の未来、かつ、卵の中身(何の卵か)が見えているという点が、洞察と同じですね。
観察であれば、その日の卵の状態を、記録として、そのまま描くところまでで、終わります。
観察は、表面の事実をそのまま認識しますが、洞察は、それ以上のものです。
しかし、観察力なくして、洞察力なしです。
事件や事故を扱う警察も、様々な分野の学者も、事実の収集と整理が大切。
その道のプロは、間違った方向に結論を出さないように、基本的な細かいところから、抜け漏れがないように調査、調査です。
鋭く細かい観察の結果、正しい考察の道筋を経て、深い洞察にたどり着きます。
洞察力は単独で存在しているわけではない、のですね。
ただし、経験を積むと、大局から物が見えるようになります。
はたから見たときに、判断材料が不十分に見えるのに、決断が速い人がいて、面食らうことがあるかもしれませんが、その人なりの観察、洞察をしているはずですよ。
洞察力と観察力の英語表現は?
洞察力は、英語では、単語でいうと、insight(インサイト)や、foresight(フォアサイト)、あるいはvision(ビジョン)と表されます。
インは中で、フォアは前、サイトは視覚なので、何かの中、見えていないところを知る力、先の方、転じて未来を予測する力なのですね。
ビジョンも、視覚という意味です。
日本で、洞察力の訳として一般的なのは、insightのようです。
逆に、insightを日本語で表したい場合。
「洞察力、見通し、識見、眼識、眼力、明察、閃き、直観」という言葉が、ほぼ同じ意味の言葉になります。
さて、観察力の英語表現は、observational power (オブザベーショナルパワー)です。
observation(オブザベーション)は観察、監視、視察といった意味。
ちなみに、オブザーバーという言葉もありますね。
こちらは、傍聴者、監視者、観察者といった意味です。
ビジネスや学会などの会議で、議決権はないけれど、会議を円滑にすすめるために発言する役割を担う人のことや、あるいは裁判での傍聴者のように、参加のみを許されている人のことをいいます。
次は洞察力がある人の特徴です。
洞察力がある人の特徴7選
洞察力は、安全な環境、問題がない環境では、さして必要ない力です。
社会に出てから身に付ける方も多いことでしょう。
何らかの、「思い通りにならなかった経験」や「じたばたして苦しんだ経験」から、深く物事を見る力が養われるようです。
そんな、洞察力がある人の特徴を、ご紹介します。
- 人を見る目が確か
- 愚痴っぽくない
- 病気の人の気持ちがわかる
- 何かの分野を極めた
- アドバイスは、求められてからする
- 子育てで苦労している
- 自分を知っている
洞察力がある人の特徴①:人を見る目が確か
田中角栄の日めくりカレンダーをインスタにあげて下さっています。
「失敗はできるだけしたほうがいい。骨身に沁みると人を見る目ができてくる。」
一つの真実でしょう。
例えば、時間がある若いうちに、マルチに騙されかけるなどの小さな失敗しておくと、子育て中など忙しい時に、似たような人々のカモにされずに済みます。
洞察力がある人の特徴②:愚痴っぽくない
上の、ステキな文を書いた方があてはまるかどうかは不明ですが、親の離婚や、家族や友人との死別、天災を経験している人は、小さなことへの愚痴が少ないです。
日常が突然に変わってしまった経験をして、何とか暮らしを立て直した人は、普通に生きること自体を幸せに感じています。
日常の有難さ、命の大切さを知っているので、小さなことで愚痴っぽくなりません。
洞察力がある人の特徴➂:病気の人の気持ちがわかる
自身あるいは家族の病気や不調を経験し、病に苦しむ人の気持ちがわかるようになった人です。
病気を抱えたことで、人への感謝や、人生に対する洞察が深まります。
洞察力がある人の特徴④:何かの分野を極めている
柔道家と建築家の2ショットです。
ご自分の専門分野に心血を注ぎ、極められているということで、専門分野については、誰にも負けない洞察力があると思われます。
洞察力がある人の特徴⑤:アドバイスは、求められてからする
善意か悪意か疑わしいような、やたらと踏み込んだアドバイスを、他人に平気でする人がいます。
久しぶりに会った時や、1~2時間一緒にいただけで、相手のライフスタイルや決定権を認めないような、踏み込んだアドバイスをするのは、関係悪化を免れない危険な行為です。
洞察力がある人は、人間関係で苦労した経験があるので、嫌がられることを無神経にすることはありません。
価値観が違う相手の気持ちを思いやるので、よい聞き役です。
何か相談を受けても、単なる根性論や一般論でアドバイスを押し付けることはありません。
洞察力がある人の特徴⑥:子育てで苦労している
反抗期のお子さんをお持ちのお母さんのインスタですが、お子さんを心から応援されているご様子ですね。
愛情をもって見守り、子どもの成長を待つなかで、親には忍耐力や、洞察力が備わってきます。
反抗期は、表面の態度が可愛くないものですが、心の奥の方を洞察できれば、大抵は、不安な気持ちがあるだけです。
自分の子育てを通じて、未熟だったり、不機嫌な態度の人との、適切な関わり方を学びます。
洞察力がある人の特徴⑦:自分を知っている
洞察力を持っている人は、基本的に好奇心旺盛なので、仕事や趣味など、様々な体験を通じて、自分に向いていることを分かっています。
向いていることだけでなく、自分の体力や気力、弱点や強みを分かっているので、何か頼まれた時などに、受けるか受けないかの判断も早いようです。
洞察力を鍛える方法5選
筋力のように、洞察力も鍛えたいものです。
洞察力を鍛える方法を5つ、ご紹介致します。
- 本を読む
- 愛のある観察を心がける
- 似顔絵を描いてみる
- ネットのお悩み相談ページを読む
- あちこちで、働いてみる
洞察力を鍛える方法①:本を読む
読書は、その本の展開を予想したり、作者が言いたいことを考えたりと、頭を働かせることになるので、洞察力を鍛えるのにピッタリです。
隙間時間を見つけて、推理小説、エッセイ、心理学など、どしどし読みましょう。
推理小説は、最初から犯人が分かっているものではなく、最後に分かるものがいいです。
アガサ・クリスティーの名探偵ポアロシリーズなどは、話の展開が楽しみで、読みやすいでしょう。
心理描写が詰まった小説としては、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」がおすすめです。
日本人からするとピンと来ないような、宗教的な対話など、読み辛い箇所もありますが(飛ばして読んでもよいかと)、父親と三人の息子たち、彼らの周りの女たち、の心理描写が面白いので、読んでみて下さい。
直接「洞察力を鍛える」本については、後程、数冊まとめてご紹介致します。
洞察力を鍛える方法②:愛のある観察を心がける
実家に子連れで帰った時。
自分たちをもてなすために、お母さんが台所に立って、何やら焦っていそうだったら、手伝おうか、と声をかけますよね。
こちらが気づかずにボーっと座っていたりしたら、突然切れて、最悪のムードになるかもしれません。
観察は、困っているのを上手に言えない性格の人を、爆発する前に助けるためにも必要です。
愛のある観察は、気づかいとイコール。
洞察力アップにもつながります。
また、お掃除のプロになったつもりで、いつもより客観的に自宅を観察して、掃除してみるとか、ついでに花を1輪飾ってみるとか、してみましょう。
自宅もきれいになるし、ご家族に喜ばれますよ。
洞察力を鍛える方法➂:似顔絵を描いてみる
山ちゃんと蒼井優さんの、似顔絵ですね。
優しいタッチで、ステキに描かれています!
その人らしく見えるのは、観察眼が確かだからではないでしょうか。
絵が苦手な方こそ、挑戦してみる価値があるかもしれません。
顔の特徴をつかむ練習を通して、洞察力もアップすることでしょう。
洞察力を鍛える方法④:ネットのお悩み相談ページを読む
お悩み相談ページには、日常生活で出会いがちな、大抵の悩みの答えが載っています。
何年も前にだれかが相談して解決した悩みが、今悩んでいる人を救っている、という感じですよね。
答える人も一般人なので、不真面目な答えもあり、はたから見ていて、質問した方が可哀そうに思えるときもありますが、たまに、偉い人が述べたかのような名言もあります。
悩みが出る前の、余裕がある時に、例えば家族の年齢に応じて見ておくなどの利用方法が、おすすめです。
困った時の準備になりますよ。
他の人の経験も、自分が人生で何かを決断する時の、洞察力アップに貢献してくれるので、有難いですね。
洞察力を鍛える方法⑤:あちこちで、働いてみる
今までの4つの方法は、失敗のない、痛くない方法でした。
でも一番のおすすめ、人を見る目、洞察力が鍛えられる方法は、働くことです。
様々な職場を経験すると、多様な人がいるということが、身にしみます。
不器用な人にとっては、向いていない職場はキツイものです。
向いていない職場で、敢えて自分を鍛える、という方法も、あるかもしれません。
年上の女性だらけ、かつ、3Kの職場に学生あがりの女の子が就職すると、悪い人、良い人、日によって変わる人、を見抜く洞察力が、否応なしに鍛えられます。
そんな極端な鍛え方は嫌だ、という方は、なるべくご自分と同じ年頃、同じ条件で働く仲間が多いところ、つまり、悪目立ちしないところへ紛れ込めたらいいですね。
あまり目立たないところから、落ち着いて人間観察をできたら、理想的かもしれません。
洞察力のメリット
洞察力があると、どんなメリットがあるのでしょうか。
身近な、ステキな例をご紹介します。
思い当たる方は、いらっしゃいますか?
- 1を聞いて10を知る
- 危険から身を守れる
- プレゼントが的確
- 褒めるポイントを外さない
- 話が簡潔
- 仕事を段取り良くこなせる
洞察力のメリット①:1を聞いて10を知る
こちらの例では、パソコンの不具合の真の原因を、少ない情報から探り当てて、解決策できています。
相談窓口のサポートの方は、皆さん察しが良く、冷静かつ丁寧な対応をして下さるので、尊敬です。
洞察力も、高いに違いありません。
洞察力のメリット②:危険から身を守れる
逃げ足が速い、とか、肉体的に強い、というよりも、そもそも、危険に近づかないで済むだけの洞察力があるので、トラブルに巻き込まれることが少ないと言えます。
例えば会社の、有能な人事担当者は、面接会場の外と中をチェックしており、その洞察力で、たとえ職歴が立派でも、人柄的に横柄そうな感じの悪い人は、採用しないのです。
洞察力のメリット➂:プレゼントで失敗しない
プレゼントは、相手の好みをよく知らないと、難しいもの。
これはレアケースですが、ストライプの規則的な模様に目がちかちかする体質の人に、ストライプの服を贈った場合、相手は、プレゼントを直視するのも辛い状態を我慢して、お礼を言わなければなりません。
よく知らない相手に、何かを贈る時は、「形の残るプレゼント」を贈らず、食べ物か、消耗品にするのが無難かもしれません。
洞察力がある人は、せっかくのプレゼントで人を困らせることがなく、心から喜んでもらえます。
洞察力に自信がない方は、本人に、せめて、何系のプレゼントがうれしいか聞いてみて下さいね。
洞察力のメリット④:褒めるポイントを外さない
どうせお世辞でしょ、と思われないような、相手が納得する褒め方をできるので、人に好かれます。
詐欺などの目的があって近づいてこられたら、恐ろしいですね。
洞察力のメリット⑤:話が簡潔
だらだら話すことで、相手の時間を際限なくとる癖のある人がいます。
ネガティブな感情に流されがちな方や、高齢などで頭の中の時計が壊れている方、自己顕示欲が強めの方、暇な方に多いです。
お酒を飲んで、話がぐるぐるしている人も、一時的に、壊れている状態といえます。
話がいつ終わるのか分からない状態に付き合うのは、大変ですよね。
Twitterの例の、ベテラン先生のように、いつも短く簡潔に話す人がいれば、洞察がしっかりできている人だと言えます。
つまり、自分を披露したい気持ちだけで一杯にならず、忙しい相手の気持ちをきちんと洞察できている人なのです。
予想より早く終わる話は、さわやかな印象を人に与え、忙しい人からは、心底、感謝されます。
洞察力のメリット⑥:仕事を段取り良くこなせる
家事の例をあげましたが、先の見通しが立てられるので、食材を無駄なく活用するために、計画的に行動できます。
野菜を腐らせてしまい、申し訳ない気分で捨てるといったことが、あまりなさそうです。
様々な試行錯誤を、面倒と思わずしてきたからこその、見通す力かもしれませんね。
自分の洞察力を調べる判断テストもご紹介
おにぎりによる洞察力テスト、ほほえましいですね。
娘さんは分かったのでしょうか?
他にも、洞察力テストがありますので、ご紹介致します。
テストの結果はいかがでしたか?
よい結果が出た方は、日頃から、周りをよく見ていらっしゃるのでしょう。
また、ご苦労をされてきたのかもしれませんね。
苦労は、その時は、要らない気がしますが、無駄どころか、未来の自分へのギフトですね。
人間を観る目、洞察力があると、前に嫌な目にあった相手と似たタイプを早目に見抜けたり、適切に対応がとれるようになっていたりします。
どんなタイプであれ、適切な距離を取れれば、問題ないですね。
あまり洞察力テストの結果が良くなかった方も、気にする必要はありません。
今まで環境的に恵まれていた、ということかもしれないし、必要なら、今からでも洞察力は鍛えられます。
まず、堅苦しく考えず、人や物事を「先入観なく観る」ことです。
物事を少し気を付けて観察して、こういうことかな、と人の感情や、物事の、その後の展開を予想します。
それを続けていると、外れた、当たった、の検証結果が積み上げられ、その延長で、洞察力が付いてきます。
仮に大きく外れたり、手痛い失敗をしたとしても、少し後に、洞察力として活かせるのです。
洞察力に関するおすすめの本4選
洞察力について考察された本もあります。
4つの分野のスペシャリストの方々が書かれた本です。
野球・ビジネス・将棋・心理!
うとい分野ばかりで、という方も、応用が利くかもしれませんので、ぜひ。
①:洞察力ー弱者が強者に勝つ70の極意
2017年秋の、宮本 慎也さんの著作です。
野球に詳しい人も、そうでない人も、参考になる内容です。
プロ野球観戦も、もっと面白くなるかもしれませんね。
②:大前研一 洞察力の原点
ビジネスマンの師匠、大前研一さんの2011年の著作です。
洞察力のヒントになる言葉が紹介されています。
一つ一つの項目が短く、時間がない時にも読みやすいようです。
➂:大局観ー自分と闘って負けない心
将棋の羽生善治さんの著作です。
中学生以上のお子さんにおすすめの本、とコメントされた方がいました。
他にも、人生と将棋の勝負は同じようなものと、将棋をよく知らない方にも共感されているのが印象的でした。
④:直観力
メンタリストDaiGoさんの著作です。
洞察力とほぼ一緒、という理解で、ご紹介致します。
この本に関しては、読書好きな人とそうでない人や、年取った人と若い方で、評価が分かれている印象を受けました。
若い方、それから、DaiGoさんの他の著作をあまり読んだことのない方に、とくにおすすめです。
洞察力は、頼れる盾
何かと理不尽なAさんが、事あるごとに攻撃してくるとします。
Aさんのご機嫌は、こういう時に悪くなるとか良くなるとか、対応を考えるだけで疲れますよね。
理不尽な人と同じ土俵で戦うのは避けたいので、挨拶程度で離れられるのが一番いいのですが、そうもいかない事情がある時は、相手の感情、事情、出方を見抜く洞察力は、自分を守ってくれる、唯一の盾です。
最悪の場合、どの程度なら反撃(反論)して大丈夫なのか、本音を言った後に詫びを入れるタイミング等々、細かなことも、洞察力が鍛えられていれば、推し量れます。
備えとして、持てたらいいですね。