多肉植物について
プクプクした葉や鮮やかな葉色が特徴で、ユニークな形をしている多肉植物。
最近では葉の一部が透き通っている種類なども人気で、世界中に愛好家がいます。
そもそも多肉植物とは葉に水分を多く蓄える種類の植物で、多数の多肉植物が自生する南米やアフリカの乾燥した環境でも生き残るために、このような進化を遂げました。
一部の寒い地域を除くほぼ世界各地に生息し、その種類は数千種類以上あるとも言われています。
砂漠に生えているサボテンやアロエ、金の生る木として知られる「花月」も多肉植物の一種類になります。
また日本の多肉植物の歴史は意外に古く、江戸時代にまでさかのぼります。
オランダとの交易で持ち込まれたのがその始まりとされ、サボテン類が爆発的に江戸で人気になりました。
そして葉にトゲのない種類の多肉植物は、元々サボテンのおまけのような形で輸入されていたようです。
確かに「火祭り」や「紅稚児」など雅(みやび)な名前が付いた多肉植物が多いのも、江戸の人たちが名付け親だったからなのですね。
最近では多肉植物愛好家を自ら「タニラー」と呼び、リメイクした鉢に寄せ植えをする等してインテリア的に楽しんでいます。
かわいらしい形とカラフルな色で女性を中心に人気があり、集めだすと次々と欲しくなりハマってしまうこともあるようです。
多肉植物には大きく分けて3つの種類に分けられます。
- 春秋型
- 夏型
- 冬型
ほとんどの多肉植物は、温度と日照時間によって生育する時期が決まっています。
それを日本の四季に当てはめて、生育する季節によって春秋型・夏型・冬型の種類に分けているのです。
そしてそれぞれの型は、その季節によって栽培方法が異なるので注意が必要です。
春秋型種
生育適温は10~25度で、日本の春や秋が生長する時期になります。
ベンケイソウ科をはじめとする、人気のある種類のほとんどがこの春秋型に当たります。
春秋の水やりと管理
- 日当たりがよく風通しの良い場所に置く
- ハオルチアは明るい日陰に置く
- 水は鉢底から水が出る位しっかりやる
- 表面の土が乾いてから2~3日後、週に一度の頻度で水やりをする
- 肥料は基本的に必要ないが、与えるなら液肥を梅雨時期前に一か月に一度の頻度で
夏の水やりと管理
- 暑さに弱いので、風通しの良い雨の当たらない日陰で管理する
- 休眠時期のため水やりは月に一度程度
冬の水やりと管理
- 寒さに弱い種類は室内で管理
- 雪が積もる地方は基本的に室内管理
- 戸外に置く場合は北風の当たらない日の当たる場所に置く
- 水やりは月に一回、土が湿る程度
夏型種
生育適温は20~30度、ほとんどの種類は強い日の光を好みます。
ユーフォルビアなどの塊根植物やソテツ、葉の表面に細かい毛が生えたカランコエなどの種類がこれに当てはまります。
また夏型といっても、春から秋にかけて生育する種類がほとんどです。
一般的な草花と同じような生育の仕方をするので、比較的育てやすい種類でもあります。
春秋の水やりと管理
- 日当たりがよく風通しの良い場所に置く
- 水は鉢底から水が出る位しっかりやる
- 表面の土が乾いてから2~3日後、週に一度の頻度で水やりをする
- 肥料は基本的に必要ないが、与えるなら液肥を規定の倍量の水で薄める
夏の水やりと管理
- 日本の高温多湿に弱いので、風通しの良い場所に置く
- 雨が当たらないように注意して、夏の午後の強い日差しも避ける
- 水やりは3日~1週間に一度
- 葉の間に水がたまると腐ってしまうので、水は根元にかける
冬の水やりと管理
- 寒さに弱い種類は室内で管理
- 雪が積もる地方は基本的に室内管理
- 戸外に置く場合は北風の当たらない日の当たる場所に置く
- 水やりは月に一回、土が湿る程度
- 暖かいと徒長してしまうため暖房の効いた部屋に入れない
冬型種
リトープスやコノフィツムといったコンパクトな種類の多肉植物や、薄い葉が特徴のアエオニウムなどが冬型の多肉植物に当たります。
元々ヨーロッパや南アフリカの高原など冷涼な地域の植物のため、日本の高温多湿な夏は苦手とします。
春秋の水やりと管理
- 日当たりがよく風通しの良い場所に置く
- 水は鉢底から水が出る位しっかりやる
- 表面の土が乾いてから2~3日後、週に一度の頻度で水やりをする
- 肥料を与える場合は秋が最適、規定の倍量の水で薄めた液肥を与える
夏の水やりと管理
- 雨に当てると腐ってしまうので、雨の当たらない涼しい日陰に置く
- 水やりはほぼ不要だが、小さい株の場合は月に一度霧吹きなどで土を湿らせる
- アエオニウムは月に一度土の表面が軽く湿る程度与える
冬の水やりと管理
- 基本的に室内管理
- なるべく日の当たる窓際に置き、時々窓を開けて換気を行う
- 最低温度を5度以上に保つように管理する
- 水やりは週に一度程度
- 暖房などで空気が乾燥している場合は、三日に一度程度水やりを行う
春秋型種の多肉植物
多くの多肉植物が、春と秋に生育期を迎える春秋型の種類に当たります。
まるでバラの花のようにロゼット状に葉を広げるエケベリアや、グランドカバーとしても人気のセダムなど多くの種類があります。
春秋型種の多肉植物①:エケベリア属 アガボイデス
メキシコを原産として100種類以上の種類があるといわれるエケベリア。
その中でもアガボイデスはひときわ葉の形がシャープで、先端がとがっているのが特徴です。
とがっている先端を爪といい、寒くなると爪の付近が赤く紅葉する種類もあります。
また寒さに強い種類も多く、中には数年~十数年かけて直径30センチ以上になる大型品種もあります。
春秋型種の多肉植物②:エケベリア属 七福神
とてもおめでたい名前の多肉植物。
こちらは親株の根元から子株が出てきて増える種類のエケベリアです。
古くより日本で親しまれた多肉植物の一種で、昔から庭先で栽培されてきた多肉植物でもあります。
子株が出てどんどん増えていく様子から、こんなめでたい「七福神」などという名前が付いたのかもしれません。
春秋型種の多肉植物③:エケベリア属 ルノーディーン
ルノーディーンは葉の色がとても特徴的な種類のエケベリアです。
こちらは「斑(ふ)入り」と呼ばれ、葉の葉緑素が一部抜けてしまった突然変異の一種類。
斑入りは多肉植物の他にも高山植物などでも見られ、その希少価値から愛好者の間では高値で取引されることもしばしば。
当然植物では持っているべき葉緑体が少ないため、光合成能力が劣ってしまい、あまり丈夫ではない場合もあるので斑入りの栽培には注意が必要になる種類です。
春秋型種の多肉植物④:グラプトペダルム属 ブロンズ姫
ロゼット状で肉厚の葉が特徴で、紅葉するときれいなブロンズ色になることからこの名前が付きました。
ブロンズ姫は比較的強い品種で繁殖力も旺盛なため、初心者でも葉挿しで簡単に増やすことが出来ます。
多肉植物の増やし方はほかの植物と違い、いくつもの方法があります。
- 葉挿し
- 挿し木
- 株分け
- 切り戻し
- 根挿し
葉挿しとは多肉植物の葉を一枚取って土に置いておき、そこから根や芽を出す増やし方。
まるでクローンのように一枚の葉から親そっくりの形のものが育つので、見ているだけでも興味深いです。
次の挿し木とは、枝分かれした茎の部分からカットしてしばらく土に挿しておくというやり方です。
しばらく水やりを控えると、そのカットした部分から根が出てきます。
株分けは、ランナーを伸ばして子株をつける種類の多肉植物や、群生した多肉植物をカットして植え替える方法。
植え替えて大きめの鉢に鉢上げすることで、より生育も促進されます。
また、切り戻しは茎が枯れてしまった多肉植物の痛んでいない部分や脇芽の出ている部分から切るやり方です。
こうすることで、徒長したり形が崩れたものを直す効果もあります。
最後の根切りとは、ハオルチアなど根が太い種類の多肉植物に有効です。
根と株を切り離すことで、株からは根が、根からは新芽が出てくるようになります。
春秋型種の多肉植物⑤:セダム属 オーロラ
ピンクのプクプクした葉がかわいいと人気のオーロラ。
こちらは同じくセダム属の虹の玉の斑入り品種になります。
春から夏にかけて暖かくなると緑色になりますが、秋になり寒くなると紅葉し、このような鮮やかなピンク色に変身します。
多肉植物には広葉樹などでみられる紅葉もあり、その色の変化もまた楽しみの一つとも言えます。
春秋型種の多肉植物⑥:クラッスラ属 パステル
クラッスラは形の整った葉が交互に連なり、上へと生育する種類の多肉植物です。
中でもパステル(小米星錦)などは上から見た形が五角形の星のように見えることから、「星系多肉」とも言われています。
星系多肉は名前に星が入った種類のクラッスラで、その数が多くあります。
- 十字星
- 南十字星
- 南十字星錦
- 星の王子
- 数珠星
- 星乙女
- 北極星
- スターダスト
- 小米星
- 愛星
- 白星
他にも彦星や桜星、銀河など天体にちなんだ名前があります。
このような星の名前のクラッスラばかりを集めた寄せ植えを、「星丼」と呼んで楽しまれています。
春秋型種の多肉植物⑦:センペルビウム属 白玉巻絹
ヨーロッパからロシアの山岳地帯に生息する種類の多肉植物。
比較的寒さに強いのが特徴で、日本の冬でも元気に育ちます。
またセンペルビウムはランナーを伸ばして子株を増やし、小さい葉が何重にも重なっており葉は薄めです。
こちらの巻絹は株の中心に、白い糸のような毛を付ける種類です。
春秋型種の多肉植物⑧:アドロミスクス属 クーペリー
不思議な模様や形が魅力のアドロミスクスは、その奇妙な外見からコレクションアイテムとしても人気。
主に南アフリカを原産として、生長は比較的ゆっくりです。
丈夫な種類がほとんどで、挿し木や葉挿しで簡単に増やせます。
春秋型種の多肉植物⑨:ハオルチア属 オブツーサ
葉の頂部に光を取り込むための透明な「窓」を持った多肉植物。
オブツーサの別名は「雫石(しずくいし)」といわれ、ハオルチアの中でも特に人気の品種です。
丸い葉がギュッと密集しており、比較的小型の種類になります。
最近では中国をはじめとするアジアでハオルチア人気が高まっており、高いものでは何十万円で取引される株もあるのだとか。
特に日本で生育された多肉植物は、そのはっきりとした季節により葉の色が鮮やかに発色するとマニアの間では垂涎の的になっています。
春秋型種の多肉植物⑩:ハオルチア属 十二の巻
先ほどのオブツーサが軟葉系と分類される一方で、こちらの十二の巻は硬葉系と呼ばれています。
文字通り固い葉が放射状に生え、白点で表された模様も種類によって様々。
ハオルチア属はほとんどの種類が直射日光に弱いので、戸外では日陰で管理しましょう。
また明るい日陰を好むので室内のほうが簡単に管理できる場合もあります。
春秋型種の多肉植物⑪:パキフィッツム属 桃美人
プクプクの今にもはじけそうな葉が特徴の種類です。
粉を吹いた白い肌が魅力の桃美人は、葉の先がほんのりピンク色に染まります。
パキフィッツム属にはこの桃美人の他にも○○美人と呼ばれる種類があります。
- 月美人
- 星美人
- 青星美人
- 東美人
- 虹色美人
色白ではち切れそうな様子は、これが昔の美人の基準だったのかと想像させられます。
夏型種の多肉植物
サボテンを代表格とする夏型種は、夏の強い日差しを好む種類が多くあります。
古くから日本人に親しまれ、和名の付いたものも多いのが特徴。
夏型種の多肉植物①:ポーチュラカリア属 雅楽の舞
こちらも斑入りの多肉植物です。
観葉植物として人気のポーチュラカも同じ種類になります。
大きくなると茎が木化して、まるで盆栽のような姿が見事。
こちらは挿し木で増える種類です。
多肉植物の種類によっては、増やす方法が限られる場合もあるのでよく調べてから増やすようにしましょう。
夏型種の多肉植物②:オロスタキス属 子持ち蓮華
こちらは原産地が日本の多肉植物です。
親株の根元からランナーと呼ばれる茎状のものを伸ばして、その先に子株を付けます。
親株の葉の様子がまるで蓮華の花のように見え、放っておくと子株がどんどん増えていくのでこのような名前になりました。
またこの子持ち蓮華は、数年に一度株の中央からドリルのような形の花を咲かせるのですが、その花が咲き終わると株自体が枯死してしまいます。
そのため花芽が伸びてきたら、花を咲かせる前に切ってしまうと枯らさずに済みます。
夏型種の多肉植物③:カランコエ属 白銀の舞
真っ白な粉が葉の全体を覆っているのが特徴の多肉植物です。
指で触ると白い粉が取れるので、水やりや手入れをするときには注意が必要です。
夏型種なので夏が好きそうに思えるのですが、こちらは暑さに弱い種類。
梅雨時期からは直射日光を避けて、明るい日陰で管理してください。
また比較的水が好きな種類の多肉植物でもあるので、他の多肉植物よりも頻繁に、表面の土が乾いたら水をあげるようにしましょう。
そしてこの白銀の舞以外にも、白い粉が付いた種類の多肉植物はたくさんあります。
実は白い粉の正体はブルーム(果糖)と言われるもの。
多肉植物自身が分泌するロウ物質です。
この白い粉は、多肉植物を強い日差しや雨を受けて発生する蒸れによる病気から守るためだと考えられています。
確かに白い粉の付いた葉に水滴を垂らすと、コロコロと粒状になって流れ落ちるのを見ることが出来ます。
このブルームがあることで水を弾く効果が得られ、多肉植物の健康にとって大切な役割をしているといえます。
夏型種の多肉植物④:カランコエ属 唐印(とういん)
大きなウチワのような葉が印象的な唐印の別名は、デザートローズ。
まるで砂漠に咲いたバラの花のように見えることから、この名前が付けられました。
秋になると紅葉し、真っ赤に色づいた様はまさにバラのようです。
どちらかというと寒さが苦手な種類なので、冬季間は断水し室内で管理するようにしましょう。
夏型種の多肉植物⑤:カランコエ属 月兎耳(つきとじ)
動物のような細かなが葉にびっしりと付いていて、本物の兎の耳のように見えることからこの名前が付けられました。
触ると本物の動物の毛のような感触で、とっても愛らしい姿をしているので女性に特に人気です。
これらの毛が生えた多肉植物で、兎に由来する名前のものは他にも多数存在します。
- 福兎耳
- 黒兎耳
- 星兎耳
- 野うさぎ
- ゴールデンバニー
- ブラウンバニー
- ジャイアントラビット
どれも姿が想像できるような名づけです。
またコチレドン属には、熊童子や子猫の爪といった動物が由来の名前の種類もあります。
熊童子は熊の手のような形の葉で、もちろんフワフワした毛が生えています。
こちらも姿のかわいらしさから、愛好者が多い人気品種です。
夏型種の多肉植物⑥:シンニンギア属 断崖の女王
コーデックスと言われる、根が肥大したような塊根植物の代表的な品種です。
この根には水分が大量に含まれており、いうなれば貯水タンク変わり。
アフリカなどの雨が極端に少ない地域で生き延びるために、このような姿の根になったようです。
またこちらの多肉植物は急斜面の場所を好んで自生しているため、この名前が付けられました。
夏型種の多肉植物⑦:ガステリア属 臥牛(がぎゅう)
まるで牛の舌のようなザラザラとした触感で、肉厚の葉が左右交互に生えている姿が特徴の多肉植物。
夏型ですが暑さには弱いので、明るい日陰で管理してください。
日本では古くから栽培され、品種改良や交配も盛んに行われてきました。
夏型種の多肉植物⑧:エピテランサ属 月世界
真っ白なトゲで覆われた姿がなんとも幻想的。
これらサボテン科のほとんどが夏型種に入ります。
サボテンは日本でも古くから愛好されており、その種類は二千種以上にのぼります。
意外かもしれませんが「サボテン」という言葉は日本語なんです。
漢字では「仙人掌」と書き、語源はポルトガル語の「シャボン」に「手」がくっついたという説が有力。
昔は衣服についた汚れをサボテンの樹液で落としたことからとされています。
また英語ではサボテンは「Cactus」、トゲだらけのという意味から来ています。
そして多肉植物は「Succulent plant」といい、水分が多いという意味になります。
冬型種の多肉植物
生育の適温は5度~20度ですが、決して寒さに強いわけではありません。
また高温になりすぎると生長がストップする種類のため、夏は水を極力控えてください。
冬型種の多肉植物①:アエオニウム属 黒法師
つややかで真っ黒い葉が特徴的な黒法師は、大きくなると1m以上にまでなります。
密に重なった葉が美しく、昔から日本の庭先で育てられていました。
冬は日当たりの良い場所で管理するのですが、日照時間が少なかったり日光が入らない場所に置いておくと徒長(とちょう)して間延びしたような形になります。
また水のやりすぎや肥料の与えすぎでも同様に徒長してしまい、多肉植物の本来の美しさを損なってしまうことも。
そのため多肉植物を育てる上では、適切な置き場所や水やりの仕方などが重要になってきます。
冬型種の多肉植物②:セネシオ属 銀月
真っ白な毛の生えた葉が天に向かって生えています。
まるで白狐の尻尾のような形が魅力的。
生育が遅い種類のためあまり市場に出回らないのですが、その幻想的な姿から人気のある多肉植物でもあります。
冬型種の多肉植物③:オトンナ属 ルビーネックレス
細い蔓にまるでグミのような葉を付けて、下へ垂れ下がるタイプの多肉植物。
あえて鉢をハンギングすることで、垂れ下がる様子が楽しめます。
気候が暖かくなるときれいな緑色になりますが、秋から冬にかけてはまるで本物のルビーのような色に紅葉します。
他の種類の多肉植物にはなかなか見られない色なので、寄せ植えの際にはアクセントとして取り入れられることもあります。
冬型種の多肉植物④:ダドレア属 仙女盃(せんにょはい)
まるで作り物のような真っ白な肌をしています。
世界で一番白い植物と言われる仙女盃は、メキシコの海岸沿いの砂漠地帯に自生する多肉植物。
初めてこの植物を見つけた人はきっと驚いたに違いありません。
またこの美しい姿から希少価値も高く、大きく育てるには時間もかかりなかなか大変なようです。
特にこの白さを保つためには雨の当たらない場所に置くのはもちろん、夏の暑さにも注意してなるべく風通しを良くする必要があります。
冬型種の多肉植物⑤:ディオスコレア属 亀甲竜(きっこうりゅう)
その肥大した根の表面が、まるで亀の甲羅の模様のようだと名づけられました。
古い葉の部分が隆起しており、ゴツゴツした見た目が面白く、模様の出方にも個体差があり楽しめます。
夏は休眠のため葉を落とします。
そのため枯れてしまったと思う場合もあるようですが、しっかりと生きていますので水やりは忘れずに。
とてもゆっくり生長するので、どちらかというと気長に栽培を楽しめる方向けです。
冬型種の多肉植物⑥:コノフィツム属 ブルゲリ
まるでドラクエに出てくるスライムのような形をしているブルゲリ。
葉の色が透明感のある緑色をしていることから、「この世で最も宝石に近い植物」として人気です。
休眠期前には緑から赤色へ変化するので、その色の変化も楽しみの一つ。
こちらのコノフィツム属は、そのシンプルな姿かたちにそぐわない立派で鮮やかな花を咲かせる種類であることでも知られています。
また秋になると脱皮を行い、古い皮を脱ぎ捨てると一回り大きいサイズになり透明感も増します。
冬型種の多肉植物⑦:リトープス属
こちらのリトープスは「生きた宝石」と言われ、人気があります。
先ほどのコノフィツムとリトープスはどちらもツルナ科に属し、これらツルナ科の観賞用の多肉植物を総称して「メセン」と呼ぶことがあります。
対になった葉と茎が一体化しており、この不思議な形が魅力でもあります。
一説では動物から食べられるのを防ぐためにこのような形になったとも言われています。
多くは南アフリカに自生するため、日の光が特に好きな種類でもあります。
生長期の冬は日当たりのよい風通しの良い場所に置いてください。
一方夏は休眠期に当たるので、涼しい日陰で水やりは厳禁。
表面がシワシワになりますが、秋まで我慢して見守りましょう。
初心者におすすめの多肉植物3選
様々な色と面白い形が人気の多肉植物の中でも、比較的丈夫で初心者でも育てやすい種類を紹介していきます。
エケベリア
ロゼット状の葉が花のようで女性を中心に人気のエケベリア。
また同じエケベリアでもカラフルな色と様々な形の違いを楽しめます。
特にこの種類は小型のタイプが多いので、少ないスペースでもたくさんの種類を栽培することが出来ます。
庭がない賃貸物件でも大丈夫、ベランダや窓際の狭い場所でも日が当たり風通しが良ければ問題ありません。
また最近はホームセンターや100均などでも、たくさんの種類の多肉植物を手に入れることができます。
特に多肉植物の流通が盛んになる春や秋には、売り場にたくさんの種類が並んでいます。
さらにメルカリなどのフリマアプリでも多く取り扱っているので、探してみてください。
エケベリアは葉挿しで増えやすいので、植え替えの際など下の葉を茎からやさしく外して土に置いておくと半年ほどで小さな株になります。
セダム
小さい葉がたくさん付く種類の多肉植物です。
セダムは繁殖力が旺盛なものが多く、伸びた部分をカットして土に転がしておくだけでもいつの間にか根付いて増えていたりします。
また葉が薄い種類のセダムは寒さにも強く、豪雪地帯であっても地植えが可能。
春になり雪が解けると生長が活発になり、梅雨時期前にはモコモコと増えた姿が見られます。
庭のグランドカバーとして使われることも多く、初心者でも簡単に育てられるのがこのセダムです。
また写真のようにお気に入りの植木鉢などに寄せ植えを楽しむことも、多肉植物の魅力の一つ。
カットして土に挿すだけで根が出てくるので、植木鉢以外にも流木やガラス食器に植えたり、リースにして飾ることも出来ます。
カランコエ
月兎耳などの毛の生えた種類や、金の生る木で有名な花月などが有名です。
葉の形のバラエティが豊富なのが特徴。
寒さに弱い種類も多いので、冬季間は室内で管理することをお勧めします。
主に挿し木で増えるタイプの多肉植物なので、形が乱れた時にはカットして土に挿すと根を出します。
多肉植物の植え替え
多肉植物を育てるうえで大切なことの一つは、植え替えです。
適切な方法と道具を使って植え替えをすることで、多肉植物を長く楽しむことが出来ます。
多肉植物の植え替えが必要な理由
お店から多肉植物を買ってきたら、まず最初にしなければいけないのが植え替えです。
水のあげすぎなどで土が湿っていると株が弱ってしまう恐れがあるので、速やかに植え替えてください。
さらに買ってきたままの黒いビニールポットに入れっぱなしにしておくと、株が群れてしまうので注意が必要です。
またできれば一年に一度、長くても二~三年に一度は根を整理して新しい土に植え替える必要があります。
根が生長しすぎて鉢の中で根詰まりを起こしたり、土の水はけが悪くなるため鉢の中の環境をリフレッシュしてあげましょう。
植え替えに必要なもの①:用土
多肉植物の生産農家やマニアの方は、何種類もの土をブレンドしたオリジナルの用土を使うことが多いようです。
- 赤玉土
- 鹿沼土
- 軽石
- ピートモス
- 燻炭
- バーミキュライト
- 川砂
これらを数種類組み合わせて、なるべく水はけのよい土を作るのが重要。
初心者の方は、サボテン・多肉植物の土などを選ぶと良いでしょう。
植え替えに必要なもの②:鉢
なるべくなら鉢の底に穴の開いているものを選んでください。
水はけが悪いと根腐れを起こしやすくなります。
また初心者の方は水を吸収してくれる素焼きの鉢がおすすめです。
植え替えに必要なもの③:スコップ
小さな株のわずかな隙間に土を入れることがあるので、スコップの先がとがっている方が土を入れやすくなります。
また植え替えや寄せ植えの際に多肉植物を直接手で植えるよりは、ピンセットなどでつまむと扱いやすくなります。
植え替えに必要なもの④:鉢底ネット
鉢底の穴が大きいときは、鉢底ネットを使用します。
あまり小さく切りすぎるとネットが動いてしまうので、なるべく大きめにカットして使うのがコツです。
植え替えに必要なもの⑤:鉢底石
土の排水性を高めるためにも、鉢底石は必ず入れるようにしてください。
鉢の大きさに合わせた鉢底石を使い、底が見えなくなる程度入れます。
多肉植物の植え替え手順
多肉植物を植え替えるのは、春や秋の気候が温暖な時期が向いています。
植え替え予定の鉢にはしばらく水を与えず、土を乾燥させておくと植え替え時に根を痛める心配もありません。
多肉植物の植え替え手順①:古い鉢から株を抜く
古い鉢から株の根元を抑えて優しく抜いていきます。
根が湿っている場合は、植え替える前に数日置いて乾燥させてから植え替えてください。
多肉植物の植え替え手順②:根を整理する
土を指で軽く払い、伸びてしまった根や古いものはカットします。
手で軽く引っ張って簡単に取れてしまうものは古いので取り払います。
多肉植物の植え替え手順③:鉢に鉢底石と新しい土を入れる
鉢に鉢底ネット、鉢底石、の順で入れ、多肉用土を鉢の半分位まで入れます。
根を整理した多肉植物を鉢の中央に来るように配置します。
多肉植物の植え替え手順④:土を詰める
多肉植物を動かないように固定したまま、株の周りに土をしっかり詰めていきます。
この時割りばしやピンセットの背などの細い物で、土を押し込みながら入れると隙間なく入ります。
ダドレアなどの白い粉が付いた種類は手で触ると取れてしまうことがあるので、植え替える際には注意が必要です。
多肉植物があるインテリア
寄せ植えや植木鉢以外に植えることが出来る多肉植物は、室内に置いてインテリアの一つとしても楽しめます。
多肉植物があるインテリア①:棚に小物と一緒にディスプレイ
リメイクした素焼き鉢やおしゃれなブリキの鉢に多肉植物を植えて、お気に入りの雑貨や小物と一緒にディスプレイしています。
プクプクしたカラフルな多肉植物と雑貨との相性は抜群で、室内のインテリアとして癒しの空間にもなります。
多肉植物があるインテリア②:流木に寄せ植え
ビーチコーミングで見つけた流木に穴をあけて水苔や土を入れ、カットした多肉植物を挿すだけでもおしゃれなインテリアに。
水をあげる時は、ぬれてもいい場所で水が底からこぼれる位たっぷりと注ぎましょう。
多肉植物があるインテリア③:ガラス容器でテラリウム
植物や苔などをガラス容器に入れて、小さな自然世界として育てることができるテラリウム。
そんなテラリウムは多肉植物との相性も良く、小さな石などと一緒に植えると野性味あふれる姿が楽しめます。
多肉植物があるインテリア④:多肉植物でリースを作る
リース専用のワイヤーバスケットを使えば、こんなかわいらしい多肉植物のリースを作ることも出来ます。
バスケットの底に麻布や水苔を敷いて鉢底石を入れ、多肉用土を入れて寄せ植えをしていきます。
この時水で固まる土などを使用して植え付けると、縦にしてドアなどにかけることが出来ます。
多肉植物を寄せ植えして楽しむことはよくありますが、初心者の方は種類が同じものを選んで植えると管理がしやすくなります。
例えば春秋型の多肉植物を集めた寄せ植えや、冬型ばかりの寄せ植えなど。
こうすることでに時期に合わせた適切な管理が可能になるので、多肉植物を元気に保つことが出来ます。
また寄せ植えするときのコツとしては、土を満杯に入れる前に大きい多肉植物を配置していきます。
根の周りに土をかけながらバランスを見て、小さめの株やカットした茎を挿していきます。
最後に隙間をセダムなどで埋めていき、土が見えないように植え付けると見た目もきれいに仕上がります。
また鉢を斜めにしながら端の方から詰めていくと、隙間なく寄せ植えが出来るので試してみてください。
多肉植物があるインテリア⑤:ハンギングで飾る
麻紐を編んで作るプランツハンガーを使って、つるして飾るアイデアです。
マクラメハンギングと呼ばれる編み方で、慣れれば10分ほどで完成。
ある程度の重さがある素焼き鉢の多肉植物も難なくつるせる強度に仕上がります。
おすすめの多肉植物紹介本
初心者向けに多肉植物の種類や育て方を紹介した一冊。
生育タイプ別に栽培方法をカレンダーにまとめたものや、寄せ植えの仕方などが満載です。
他にも多肉植物の増やし方やトラブル解消法などを細かく解説しています。
また様々な種類を写真付きで紹介してあるので、図鑑としても楽しめます。
多肉植物の種類まとめ
数千種類あるともいわれる多肉植物は、多彩な色や形で私たちの目を楽しませてくれます。
また寄せ植えにしたり雑貨と一緒に飾ったりと、インテリアとしても人気。
しかしそうは言っても、生きている植物であることには違いありません。
しっかり水をやったり太陽の光を当ててあげることが大切になります。
多肉植物の種類や生育タイプをしっかり知ることで、上手にお手入れをして長く多肉植物を楽しんでいきましょう。